AI 機械学習 歴史

AI(人工知能)とは?AIの60年の歴史を簡単解説!

2021年12月26日

Ryo

文字の自動認識や、会話できるロボット、車の自動運転など、現在様々な領域で当たり前のように使用されているAI。
では、AIはどのような歴史から生まれたのでしょうか?
今回は、AIの歴史について、その起源からおよそ60年間をまとめました

引用元: 松尾豊『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』KADOKAWA 発行

AI誕生以前 (~1956)

 AI(Artifical Intelligence、人工知能)誕生以前は、ジョンスホプキンス大学などが「思考する機械」として、バッテリーが少なくなると自分の充電場所を見つけて自ら充電したり、バッテリーが切れかかると異常を知らせ警告を鳴らしたりするロボットJohns Hopkins Beast、ウォルターの亀)の研究開発を行っていました。

 今までになかった、新たな領域にある機械が開発されたことで、研究者の中で、「思考する機械」とは何か?という問いが起こりました。何を持って、知性を持っていると定義するのか?この問いに対し、イギリスの数学者のアラン・チューリングは、自身の論文「Computing Machinery and Intelligence」の中で、下記のように、質問の受け答えに関して、受け答えを行ったのが人間か機械かを判断できない場合、その機械は知能を持っていると定義しました。

AIの誕生 (1956)

 AIは、1956年に行われた、ダートマス会議によって初めて世の中に広く浸透する言葉となりました。ダートマス会議は、出現してまもないコンピュータに、人間のように知的な情報処理をさせたいと考えた研究者たちが行なった議論で、会議の中で初めて「AI」という言葉が使われました。

ジョン・マッカーシー(ダートマス・カレッジ助教授)がAIの課題として提言した7つの課題。

(1) コンピュータがシミュレーションできるように,知能の機能を正確に記述すること
(2) コンピュータが人間と同じように言語を操作できるようにすること(→自然言語処理)
(3) 神経回路網(→ニューラルネットワーク)を使って高次のタスクを遂行できるようにすること
(4) 計算の複雑さにかかわる理論をつくること
(5) コンピュータが自己の能力を改善する学習能力を実現すること
(6) 抽象化の機能を実現すること
(7) 本題に直接関係しないが示唆に富むヒントを用いた創造的思考を実現すること

(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

第一次AIブーム (1956 ~ 1974)

 ダートマス会議を終えて、アメリカの政府機関などがAIの研究領域にどんどん資金を注ぎ込み、第一次AIブームが巻き起こりました。第一次AIブームは、「推論と探索の時代」と言われており、数学の定理の証明や、チェスのプレイング、問いかけに対する返答など、与えられた課題に対して、その正解となる行動を推測し、あらゆる答えの中から正解に近いものを探索し導きだすAIが開発されるようになりました。下記に例を示します。

ELIZA

 ELIZAは、1960年代にJoseph Weizenbaumによってつくられた文字による対話システムで、「自然言語プログラムの祖」とされています。自然言語処理は、「私たち人間が日常書いたり話したりしている日本語や英語のような、自然な言語のこと」であり、ELIZAは、患者(質問者)に対しアドバイスをする「DOCTOR」という下記のようなシミュレーションがよく知られています。

I am the psychotherapist. Please, describe your problem.
(私は心理療法士です。悪いところを教えてください。)
I have a terrible headache.
(ひどい頭痛がするんだ。)

Maybe you should consult a doctor of medicine, I am a psychotherapist.
(たぶん医者に診てもらってお薬をもらうべきですね。私は心理療法士なので。)
Okay, I'll do that then.
(わかった。そうするよ。)

Can you elaborate on that?
(もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?)
What are you talking about? See you later.
(何を言っているの?またね。)

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

第1期 冬の時代 (1974 ~ 1980)

 第一次AIブームの背景で、コンピューターの性能の限界「組み合わせ爆発」の考え方により、AIはチェスの勝敗のように、「与えられた課題」以外を扱うことが難しいことが分かってきました。これらのことから、複雑な問題がはびこる社会で、AIを活用していくことの現実味がなくなり、政府や民間企業、大学などからのAI研究に対する資金的援助は軒並み打ち切りとなりました。ここで、AIの研究分野は冬の時代を迎えることとなります。

組み合わせ爆発

コンピューターの計算理論において、問題を解く上で必要な条件や要素の組み合わせが増加することにより、計算量の爆発を伴うこと。計算時間が問題の規模の指数関数または階乗に比例して大きくなるため、事実上、有限時間内で解けなくなる場合がある。

デジタル大辞泉

第二次AIブーム (1980 ~ 1987)

 冬の時代を打ち破ったのは、エドワード・ファイゲンバウムらが開発した、「エキスパートシステム」と呼ばれるシステムでした。このシステムは、医者などの専門家が「もし、のどが痛い、かつ、頭痛がするならば、風邪である可能性が高い」のような「知識ベース」を作り、それらの知識に「AはBである」「BはCである」「よってAはCである」の論理ような「推論エンジン」を適用することによって、誰しもが専門家の知識を扱うことができるというものでした。

 エキスパートシステムは、いままでのAIにあった決められた会話ではなく、与えられた知識を用いて論理構築を行うため、今までとは比較にならないほど良い精度で問題を判別できました。よって、医療をはじめとして、会計、人事など様々な分野への応用が見込まれる、非常に画期的な手法として知られ、実社会でAIが扱われるきっかけとなりました。その結果、再び、アメリカ政府機関などから巨額の資金が投じられ、世界各国で活発にAIに関する研究が行われていく「第二次AIブーム」となりました。以上の背景から、第二次AIブームは「知識工学の時代」と呼ばれます。

第2期 冬の時代 (1987 ~ 1993)

 実用化が進んでいくように考えられた「エキスパートシステム」も、研究が進むにつれて、維持コストが非常に高くつくことや、入力が間違っているととんでもない答を返してくるなど、多くの課題が出てきました。また、個人向けのAIの実用に最適化したLISPマシンは、当時5億ドルもの市場を持っていましたが、AppleやIBMなどのデスクトップコンピューターの飛躍的な性能向上により、バブル経済のように、一気に市場が崩壊しました。その結果、再びアメリカ政府機関などからの資金援助はなくなり、AI開発は2回目となる「冬の時代」を迎えたのです。

第3次AIブーム(ディープラーニング)(2006 ~ 現在)

 2006年以降、2回目の冬の時代を打ち破ったのは、「機械学習(マシンラーニング)」の発明でした。今までは、学習に対しコストがかかること、精度が実務レベルに達していないことが問題でしたが、機械学習の登場により、さまざまな研究が行われるようになると、コスト、精度ともに実務で扱えるレベルにまで達し、医療、金融、マーケティングなど多くの分野で積極的にAIが使われるようになりましたこの発明から、現在まで続く「第三次AIブーム」の幕開けとなります。2010年代からはさらに研究が進み、機械学習の1種である「深層学習」が開発されると、さらに精度が向上し、現在では手書き文字の認識や、車の自動運転などの技術が実用化されています。現在、AI市場は3275億米ドルとも言われ、今後もさらに市場が拡大していくことが予想されています。

機械学習

機械学習(きかいがくしゅう、: machine learning)とは、経験からの学習により自動で改善するコンピューターアルゴリズムもしくはその研究領域で[1][2]人工知能の一種であるとみなされている。「訓練データ」もしくは「学習データ」と呼ばれるデータを使って学習し、学習結果を使って何らかのタスクをこなす。例えば過去のスパムメールを訓練データとして用いて学習し、スパムフィルタリングというタスクをこなす、といった事が可能となる。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Ryo

 本記事では、AIの歴史について、その起源から60年間を追っていきました。今では世界各国で実用化されており、 3275億米ドル の市場規模を持つAIも、はじめは「おもちゃ」だと揶揄されるほどでした。当時のAI研究者・開発者たちが、社会の期待と現在の技術との乖離を正確に把握し、自分たちの技術を信じて研究開発を継続していたからこそ、今のAI市場があります。その姿勢には、見習うべきことがいくつもありますね。

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